野球の目的
公認 野球規則(ルールブック)を開くと、いちばん最初に《試合の目的》とあり、
「一・〇二 各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする」
と記されている。
ところが、「得点」とは何か? 野球の根幹になる核心については、そこから58ページもの間、まったく書かれていない。おそらく、ルールが後にできて、競技は先に始まっていたのだろう。野球の得点がどんなものか、プレーする人は知っている前提で規則がまとめられている。
「野球とは、生きてホーム(家)に還るスポーツ」
映画《最後の早慶戦》の最初に、この文が浮かび上がる。
打者が走者となり、三つのアウトを奪われる前に、二塁、三塁、そして本塁へと生還すれば得点となる。
試合の目的は、相手より多くの得点を奪うことだが、「野球の目的」はもっと深く豊かだ。
だからこそ、日本人の心をこれだけ惹きつけ、老いも若きも、男性も女性も、職業やものの考え方にかかわらず、多くの人々を夢中にさせてきた。
いま僕たちは、「勝つ」という“試合の目的”に執着するのでなく、本来の“野球の目的”を原点から見つめる時期に来ている。